私たちの研究室では、動物生産と密接にかかわる成長や生殖の内分泌制御に関して分子生物学的手法を用いて研究しています。
主要な研究テーマは以下のとおりです。
- 家禽の抱卵行動制御機構に関する研究
- レプチンの細胞内情報伝達に関する研究
- 家畜・家禽の生産形質を支配する遺伝子の単離と機能解析
l :家禽の抱卵行動制御機構に関する研究
白色レグホーンをはじめとする採卵鶏の多くは、産んだ卵を温めることがありません。鳥類が卵を温める行動は抱卵と呼ばれ、本来鳥類に備わっている能力ですが、産卵能力の向上を目指した遺伝選抜の結果、卵を温めることがないニワトリが作られました。したがって彼らは自分の力で雛を孵すことができず、人がいなければその種は途絶えてしまいます。鳥類の抱卵の開始や維持は下垂体ホルモンの1つであるプロラクチンが関係していることが知られています。プロラクチンは動物の生殖には欠かすことができないホルモンで、ヒトを含めた哺乳類では乳汁合成に、魚類では、特にサケなどが産卵のために海から川へ遡上するときの浸透圧調節に関わることがよく知られています。しかし、プロラクチンによる鳥類の抱卵行動制御の分子メカニズムは明らかにされていません。私たちの研究室では抱卵中に発現が変化する遺伝子を解析し、鳥類の抱卵行動を制御するメカニズムを明らかにすることを目指しています。
抱卵に対する意欲は非常に高く、簡単には巣から離れない
抱卵行動の発現にはプロラクチンにより制御される未知の因子が関与する??
ll :レプチンの細胞内情報伝達に関する研究
レプチンは主に脂肪細胞から分泌されるペプチドホルモンで、摂食抑制やエネルギー代謝調節など様々な生理作用を有しています。またこの遺伝子に変異が生じると過度の肥満を引き起こすことから肥満遺伝子とも呼ばれています。したがってレプチンは、人の生活習慣病等の治療や改善を目的とした研究が盛んにおこなわれているほか、家畜においては、生産性を高めるための基礎から応用まで幅広く研究が展開されています。私たちの研究室では、レプチン受容体を安定的に発現する細胞を用い、エネルギー代謝等に関わる遺伝子の発現制御の解析を進めています。
レプチンに刺激に反応した転写因子の細胞の内での動きをアルタイムで確認
特に、鳥類では他の脊椎動物に比べ、レプチン研究が大きく遅れています。代謝を制御しているレプチン研究の発展は、発育や、生産物の品質の改善など家禽産業への貢献も期待されることから、産業への応用を目指して研究を進めています。
トリレプチンについては不明な点が多い
lll :家畜・家禽の生産形質を支配する遺伝子に関する研究
動物生産では、低コストで最大限の収益を上げることが求められます。そのため、生産物の量や品質を向上させる遺伝子の同定、機能解析とそれらの遺伝子の選抜への応用が求められています。私たちの研究室では、特には、動物生産にかかわるホルモンや受容体の遺伝子の単離を行うとともに、それらの遺伝子の転写制御機構について研究を行っています。これらの研究を通じて、動物生産への改善を目指しています。
|